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鳩山郁子さんの漫画『青い菊』を 買いました。 いつも思うことですが、この方の作品は、透明感があるというか、硬質の、鉱物的な 光を帯びているような描写がとても気に入っています。モチーフも主題もたいへん ステキですね。 去年、ある本屋にて偶然眼にとまり、手にとってみたのですが、衝撃的な出会いでした。 以来、著書はほとんど集めましたが、今回買った『青い菊』はまだでした。 さて、ゆっくり読んでいこうと思います。 「・・・紫紺の闇の中に點々と光るものは、櫻である。皓々たる月華に照され、其の中天に差しかゝらんとする月よりも更に明く、燦爛と耀くかと思はれた。 『何と云ふ美事な櫻だらう。』駿介は橋畔に佇み、軍帽の眼庇をわづかに上げて、夜闇の隅に至る迄眼前を埋め盡した櫻花を眺めた。 『やア、何をしてゐるんだい。』さう聲がして振り向くと、中學の制服を被た白皙の少年が立つてゐた。嘗ての同學、仁志川だ。 『何だ、君か。見れア判るだらう。櫻を看てゐるのさ。』駿介は煩さうに答へると、又堤上の櫻並木の方を向いた。 『君にもさうした風雅を解する心があつとはねえ。』と、仁志川が意外さうに呟くのを黙殺して、駿介は踵を返した。 『何處へ行くんだい。』 『宅へ歸るのさ。明朝の汽車で發つんだから、時間が無い。君と話してゐるのは時間の無駄と云ふものだ。』 冷かな聲根に、此の少年の白面に、夜目にも鮮かな朱が刷かれたかと思はれた。然し、仁志川は憤つたのではなかつた。足早に歩み去る駿介の、『赤丹』も眞新しい肩を摑んだ。」
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